杏子とOLの出席簿

20代女子ふたりの背伸びをしない交換日記。

私たちはいつも間に合わない【OL 久しぶりの登校】

by ちやほやされたいOL

f:id:koukandairy:20200727220729j:plain

特になんの用事もない4連休だった。

1歩も外に出ないのも癪なので、雨の中、髪の毛を染めに行くことにした。

北千住にある美容室で、月に1度、カラーとカットをしてもらっている。

初めて足を運んだ時にはスタイリスト見習いだった担当の男性は、去年、店長になった。

かれこれ6年ほどの付き合いになる。 歳が近いこともあり、お互いのことはどんなことでも話す。

私がとんでもない失恋をした時には30センチ断髪してもらったし、彼が虚言壁の女性に振り回されているときには全力で交際を引き止めた。

「納車された?」 髪にカラー剤を塗りたくられながら質問する。

彼は先月車を購入した。学生のころから節約と貯金生活だったから、ここまで高いものを買うのは初めてなのだと話していたのだ。

「いやそれがさ、コロナの影響で遅れてて…。来月の中旬くらいになっちゃうらしいんだよね」

「あら、ずいぶん時間かかるのね」

「そうなんすよ~」

「待ち遠しいね」

「そうだね~」

カラー剤の匂いが鼻をつんざく。彼は私の髪の毛から目線を逸らさずポツリと言った。

「っていうか、別れそうなんだよね」

「ふぇ?」

「ちょっと喧嘩しててね。今度こそ終わりかも」

彼には結婚を前提に付き合っている彼女がいる。 私は彼とその彼女との出会いも、喧嘩も、あらゆる危機も見守ってきた(いや、実際彼女に会ったことはないので、ただしく言うと聞き守ってきた、ともいうべきか)

彼女には小さな子どもがいる。だから出かけるときは3人で、都心から離れた遊べる施設やハイキングが多い。

彼が車を購入したのは、子どもの着替えなどでどうしても荷物が多くなってしまう彼女と、帰りの電車で疲れて寝てしまう子どもの負担を減らすためだった。

「間に合わなかったのかもなぁ、車」

彼は鏡の中の私に少し困ったように笑った。

私はどんな顔をしたらいいのかわからなくて、同じように困った微笑みをつくった。

 

  

帰宅して、服の整理でもするかとクローゼットを大きく開ける。

冬物のコートはクリーニングに出さなくてはいけないので紙袋に詰めた。学生のころから使っているボロかばんはごみ袋に入れた。

ふと、あるワンピースを見つけて手を止める。

まだ値札を切っていない青いワンピースだった。

「あぁ」と思わず声が漏れる。

私は普段、スカートをほとんど履かない。だれに言われたわけでもないのだが、高身長で男の子のようなヘアスタイルの私には、キャラ的に合わない気がしてずっと敬遠してきた。

でも、たしか冬の終わりごろ、テレビを見ながら好きな男が「ワンピースを着てる女性いいよね。ちやほやも痩せているんだから、きっと体のラインが出る服が似合うよ」

と、そんなことを言っていて、愚かなことに真に受けて後日ネットでポチったのだ。。

でもコロナやらなにやらでデートにはなかなか行けず、いざデートに出かけることになっても結局気恥ずかしくて「今度にしよう」と何度もハンガーに戻した。

エストマークに控えめなリボンがついた爽やかなワンピースは、結局一度も着ていない。

実は好きな男とも、2週間ほど前からちょっとのことで気まずくなってしまい、連絡をとっていない。おそらく、関係の修復は難しいだろう。

「間に合わないことばっかりだなぁ……」

準備が整うころには、いつも手遅れになっている。 新品の美しいワンピースを手に、困って少し笑ってしまった。

街で駆けるわたしを見つけてよ【あしきょう 遅れた宿題提出】

by 杏子

f:id:koukandairy:20200207053831j:plain


和光堂の時計が5時を知らせたまさにそのとき、ワタシは銀座四丁目の交差点を渡っていた。夜の始まり、ネオンが映える。12月の5時の中央通りなんて、1年でもっとも輝いて見えるときかもしれない。

 

日産の側から歩いて高島屋の前に着いたとき、その玄関で人を待っている彼の姿を目にする。ワタシもよく知っている、ジンジャー色のウィンドウペンのツイードのコート。

 

どきっとしてとっさに人混みに紛れた反面、声をかけたい衝動に駆られて数歩戻ったけれど、ワタシはやっぱり声をかけずに街に溶けた。–––––どのみち1時間後に会うのだから。

 

会ったときに言って驚かそう、と思って、ワタシは二丁目の伊東屋へ駆ける。買い物を済ませてから、化粧室で真っ赤なリップを引いた。

 

---

 

今彼には付き合っている人がいる。その事実を知ったときワタシは異国の地で、ただただ孤独を胸に抱いた。その事実を自分の口で言う羽目になった彼だから、さすがにワタシを傷つけたことは自覚している。

 

もう彼を解放すべきだとも思った。彼から自分を解放すべきだとも思った。でも冬の一時帰国を前に浮かんだのは、どんな形でもいいから会いたい、という気持ちだった。

 

共通の友人に根回しをして、とにかく彼の予定を聞き出して、複数人で同窓会をしようと誘い出してくれ、と懇願した。友人がワタシのことを伏せて彼に同窓会を発案したら、意外にも彼がさくさくと店の予約まで済ませていた。

 

あとからワタシを誘いたいと告げられた彼は友人に「彼女が僕に会いたいと思うかどうか次第だけど、いいんじゃない」と返したらしい。ばかね、全てはワタシがあなたに会うために仕組んだことよ。

 

---

 

不思議だったのは、不意に、昔の同級生が連絡をくれたこと。卒業してから会ったことがなかった彼だけれども、帰国して早々に組んだランチの2時間、飽きることなく楽しくおしゃべりすることができた。

 

きっと彼はワタシより楽しんでくれたのかもしれない。お店から駅への道すがら、か細い声で緊張気味に、今度うちに遊びに来ます?と聞こえた気がする。

 

こういう人、彼氏だったら、いいんだろうな。それは心から思った。だからそのままそうLINEしたら、彼は「嬉しい! その言葉スクショした!」と言ってくる。素直な子なんだなと思った。

 

そう、殿とワタシの、ハイコンテクストな皮肉の効いた会話とは違う、ストレートでわかりやすい表現。殿との再会を控えて、正直動揺した。

 

---

 

OLちゃんとの1年ぶりの会合は、そんな、素直な彼と、皮肉な彼との会合の狭間にあった。ワタシの近況に、彼女は目を丸くして驚きつつ、寄り添ってくれる。

 

「なんか地元くんを応援したい気持ち。でもそれって、立場が弱いものを応援したい心境かも」

それでも心はまあまあ揺れた。彼と向き合っていければ、このまま殿から気持ちを離すきっかけになるかもしれないとも思った。それを男の利用だと取る声も頭の中には響いたけれど、それもまた人生だとも思った。

 

会ってみて、感じたものを信じたい。OLちゃんはそれを否定するでもなく、詮索するでもなく、静かに微笑んで、報告待ってるね、と言った。

 

---

 

スコットランド製のツイードのジャンパースカートの上にイタリア製の真っ赤なコートをまとって、ワタシは有楽町に降り立った。直前に代官山の美容院で整えてもらった髪は、毛先をきれいに丸めて揺れていた。

 

どんな都会でも、どんな人混みの中にも、彼を見つけてしまう自分の能力を知ってしまった。飲み屋街の中を闊歩してくる彼に気づきつつ、気づかないふりをして声をかけられるのを待つ。

 

「どうも」

「どうも」

「どうもどうも」

「さっき、タカシマヤにいた?」

「いた」

「見かけた」

 

彼が途中で拾ったであろう友人は、ワタシたちの隣で、ぎこちない会話を見てケラケラと笑った。

 

---

 

対して地元の彼はその頃、ワタシが渡航する日の空港への送迎を申し出てきた。彼は運転が得意で、空港にも慣れているから、送りたいという。

 

これで送らせてしまったら、期待させてしまうと思った。でももし彼が踏み込んでくるのなら、ワタシは受け入れようかとも思っていた。

 

ワタシから彼に踏み込まなかったのは、次の一時帰国が一年後だから。仮に付き合うなんてことになっても、相手の人柄を探りきれていない中での遠距離は、続ける意味を見出しづらい。

 

相手の本気度次第。もしワタシに一生懸命向き合ってくれる人ならば、殿を思う気持ちを鎮めることもできるのかもしれない。そう思いながらも、殿との会合のあとまで、送迎についての返事を焦らしてしまった。

 

---

 

久しぶりに集まる友人たちとの焼き鳥屋での食事の間、殿が緊張のあまりずっとぎこちないまま、調子が出ていないのが手に取るようにわかって、むしろ不憫に思えた。ぎこちないままに、彼はワタシに絡む。ボケて白子や泡盛を勧めてくる際どさ。

 

ワタシもワタシで普通には振舞えていなかったかもしれない。それでも、努めて朗らかに笑って話しかけていたら、一瞬見せた彼のはにかんだ笑顔が、懐かしくて嬉しかった。

 

空になった串を、ワタシがうっかり近くにあった彼のグラスに挿しそうになって、彼は自分の烏龍茶が砂肝味になってしまったと拗ねてみせた。今食べていた串が何であったかなんて、自分でも食べたそばから忘れていくのに。

 

彼の馴染みの店だったのもあって、食べ物のおすすめや注文に抜かりがない。きっちり2時間でお腹を満たすと、彼はこのままカラオケに行くと主張する。でも近くのカラオケ店に行く途中でふたり離脱して、結局同窓会を企画してくれた友人と、彼とワタシの3人でマイクを握ることになる。

 

---

 

What can I else do? と歌ったのはビリー・ジョエルだが、ワタシが今、彼のそばにいられない状況は、自分で選び取ったものである。彼抜きの自分はちっぽけなごみ屑みたいな気がして、何者かになりたくて選んだ道。

 

そばにいられなくて、ごめんね。ずっと好きだったの。I have been loving you. それは決して、I LOVED you ではない。

 

映画『LA LA LAND』のラストに近いシーンで、主人公たちが口にするのは「I’m always gonna love you.」だった。これからもずっと、いつだって愛している。あの映画を最初に観たあとに思ったのは、ワタシもこんなふうに愛せる人を見つけられるんだろうかということ。

 

奇しくも試聴の1週間後に彼とのファーストコンタクトに至ったことに気づいたのは、彼がもうすぐワタシたちが出会った土地を去るという時期に、ひとり鬱々とした気持ちで出かけた寒くて暗い港町からの帰りの電車で『LA LA LAND』2度目の鑑賞をしたときだった。

 

---

 

自分にとって5年ぶりのカラオケ、彼に意地悪されて1曲目を握らされ、だからって初っ端から甲斐よしひろを投入するワタシはどうかしているが、続いて彼がぶち込んだのもジュリーに大瀧詠一、かと思えば『東京ラプソディー』と、趣味がおかしい。

 

彼は1曲目から声量全開、テンションぶち上げで圧倒されてしまった。ていうかこんな一面知らんわ! ワタシはカラオケの経験が乏しく、発声の調子がなかなか出なくて、ほかの2人より歌声が小さいまま。

 

ZARDの『負けないで』をか細く歌うワタシの横で、彼がマイクを握って歌うわけでもないのに口に向けている。マイクの角度を上げろと、暗にワタシに示唆していた。確かに角度を変えたら声を拾えるようになった。なんだその、当事者にしかわからない優しさ。

 

ワタシたちの世代なら誰でも知っている『勇気100%』を入れたら、彼は歌を重ねてくる。ぎこちなさとかはずかしさとか、そんなのすっ飛ばして曲が懐かしかったのだろう。声がハモるのを、ワタシは恥じらってしまう。

 

---

 

あのころから、2年が経つ。2年間というあいだ揺らぐことなく「have been loving him」だったワタシは、彼に交際相手がいると知ったあの日から、試しに自分の暮らしから彼を取り除いてみようとした。

 

彼の誕生日にしていた携帯の暗証番号をまず変えた。彼のSNSを除きまくる習慣をやめた。彼の写真を眺める時間を持たないようにした。それでも、ワタシは未だに携帯のロック解除を間違う。

 

人生において、その場に居合わせる人を、ワタシたちは選ぶことができない。選べるのは、居合わせた人とその後も交流を持つか、否か。

 

ご縁だから。ご縁があればまた巡り会うから。そう言って人はワタシをなぐさめた。でもチャンスって待っているだけじゃ掴めないんじゃなかったの? ご縁を自分からつなぎにいったら、いけないの?

 

---

 

何か彼をはっとさせる曲はないか。一度予約した山下達郎『ドーナツソング』を取り下げて、ワタシは本来なら彼のレパートリーであろう曲に差し替える。あの頃、一緒に聞いた曲。

 

ああ 果てしない 夢を追い続けて

ああ いつの日か 大空駆け巡る

 

クリスタルキングは『大都会』、ワタシに取られて悔しげな顔をした彼は、声をかぶせて曲を奪ってくる。それを見て友人がケラケラと笑っている。これを楽しくなかったと誰が言える? 令和にもなって、昭和の曲を歌い合う、平成のワタシたち。

 

友人の電車の時間が迫るので、彼が最後の曲だと言って『また会う日まで』を入れる。これでもかと熱唱する彼を見ながら、やっぱり楽しい人だと思った。そして残念ながら、この楽しさを、ワタシはあの子に見出せていない。

 

---

 

カラオケの余韻を胸に抱えて、空港への送迎は断ったが、そのまま終わるのも寂しい気がして、同級生の彼を渡航の前の日のランチに誘ってみた。もう一度会えるなら嬉しい、という言葉に、喜びよりは罪悪感が募る。

 

でも、待ち合わせの相談が完全にワタシにお任せなあたりで、少し彼へのモチベーションが下がってしまった。食事の注文も二次会の段取りもスムーズな殿の手腕が記憶に新しかった。

 

結局当日の朝になって場所と時間が確定して、ワタシはその会合の前にひと仕事を、と思って出かけたら、彼からのLINEが入る。「残念なお知らせです」「上司から急な呼び出しを受けました」。

 

そのあともひとしきり謝罪や残念がる言葉が画面に並んだが、正直ワタシはほっとしてしまった。ていうかそんなに残念がるならどこにでも会いに来れば? その程度の気合で遠距離恋愛なんて夢のまた夢。

 

---

 

結局優しくって、結局楽しい殿。実際に会ってみたら、惚れなおしてしまったというのが正しい。あんな歌われちゃったら、惚れちゃって困る。カラオケ店を出て、ぎこちないまま「じゃ」と言って別れる。

 

「じゃ…おみやげありがとう」「いいえ。じゃ」「じゃ」ワタシは髪を翻して立ち去った。駅の階段に消える彼の後ろ姿をそっと振り返る。そういや、彼より先に立ち去ったのは、初めてかもしれない。

 

このぎこちなさ、何かデジャヴだなぁと思ったら、ワタシたちこれ、既に一回やってる。友達に戻ろうという宣告のあとで、やっぱり理解できないと食い下がった日。その2か月後にわだかまりを押し殺して出かけた、冬の日のハンバーガー屋

 

何か笑えた。歴史は繰り返すのか。そういや“失恋”のあと、2年前と同じような出来事がひとつならずいくつも起こったから、再現かよパラレルワールドかよって思っていたけれど、またここからやります? 何だか勝手に、もう一度やれそうな気がしてきてしまう。

 

---

 

まもなく年が明けるその頃、かつての同級生である彼が「あけましておめでとう! 今年もよろしく!」と威勢良く送ってきた。ああ、日本は今、年が明けたのね。時計を見やりながら、ワタシは遠く離れた土地で、まだ大晦日を生きていた。

 

その年最後の晩餐を楽しもうとささやかな夕食を用意していたところだったので、ちびりちびりと味わっていた12月の余韻をむしり取られた気がして、ワタシは興ざめしてしまった。

 

年が明けても彼の夢は覚める様子がない。会話の中に少しだけ無理やり「ワタシの好きなひと」の話をねじ込んだ。冷水をぴしゃりと当てて、ワタシがそこからLINEを返すことはなかった。

 

これで、いいの。新年なんだから、気持ちを新たにワタシではない人を見つけて。ワタシはどうしても、もう少しだけあの人にこだわりたい。別のトークルームを開いて、ワタシは文字を打ち込んだ。

 

 

 

 

下書き保存の放出【OL 掃除の時間】

by ちやほやされたいOL

私はそろそろ「ブログを止めるな!」ってノーカット映画製作しないといけないレベル。

交換日記だというのに前のバトンを受け取ってから早◯ヶ月。 ほんとはいくつか記事書いてたんですいやまじでほんとかっこ悪い言い訳みたいになるけど。

ただなにを書いても本心でない気がするというか、本当のこと以外書きたくない気持ちと、本当のことなんて言ってもしょうがない気持ちの狭間で、なにも決められない自分にやきもきしつつ 転職したり引っ越したり猫と生活をはじめたり。書きたいことは山ほどあるけどどうしても言葉にする能力がないので思ったことを過剰書きにします。 f:id:koukandairy:20191019123500j:plain

…………

退職は思ったより簡単。でも上司の悲しそうな顔を見るのは辛かった。「今まで気づいてあげられなくてごめんね」と言われてしまうのはもっと辛かった。

転職活動は就活より楽しい。競争相手がいないから自分のペースでできる。

物件探しは宝探し。でも程よいところで決めないと抜け出せなくなる。

異業種への転職は孤独に感じる瞬間もある。でもそれを超える発見もある。 にしても26歳で転職する人多すぎ問題

インスタで転職の報告する人すごいと思う。どうでもいいよ。苦笑いでいいね押した。

インスタ繋がりで言うと、ストーリーズに文字びっしり投稿する人の卑怯さが好き。スクショして全部読んであげてる

サークル一緒だった人たちへのストーリーズを非表示にした。私のことは忘れてください

昔の友達のことでいうと、話していない人も私の転職先を知っていて肌が粟立った。私のいないところで私の話をされるの気持ち悪いし、そもそも個人的なことは親しい人にも言うべきでないと実感した

大切なことは人に言わない方がいい←これは2019年1番身に染みたことかもしれない

8月に母に軽い話をしたら勝手に彼女の中で話が進んでいてとてつもない期待をされていた。例えるなら、今年の冬めちゃくちゃ雪降るらしいよ、と言ったら「あの発言はつまり沖縄に引っ越した方がいいっておすすめしてくれたのよねっ!?家はもう決めたからねっ!あなたも来るわよねっ?」みたいな感じ

暇な時間が多い人は自分に都合のいいように言葉を受け取って勝手に妄想して膨らませる。しかもこれが純度の高い馬鹿素直からくるものなので扱いにくい。

いい意味でも悪い意味でも、親は子どもに期待してしまうものなのだと思った。 それにしたって、残りの人生のイベントを私に押し付けるのはやめていただきたい。

母とのLINEをやめたら時間ができたので読書をしている。短編集には当たり外れが大きい。

最近読んだ岡本かの子の風景描写の美しさに打ちのめされた。不安定な人生を送った人だから感じた色や匂いだったのかもしれない。

岡本かの子でググってみてほしい。噛み締めた絶望が多い人ほど、なんでもない景色の尊さを知っている。でも彼女も、生前たくさんの人に異常者扱いされたことだろう。心が健康でないことは恥ずかしいことだと思われがちだ。

メンヘラという言葉を使って笑う人を見るたびに心が擦り切れる。

かく言う私もメンヘラだけど、猫を飼い始めてから1人でベソベソ泣かなくなった。多分、自分よりか弱い存在に不安な想いをさせたくないからだ。

そもそも猫と生活をはじめたのはある決断をしたから。巻き込んでごめんね。大切にするよ。

あとこれは発見なんだけど、猫って遊びたいおもちゃを自分で持ってくる。朝起きると枕まわりにおもちゃが散乱している。

台風での雨漏りに真っ先に気づいたのは猫だった。意外と頼もしい

家の近くの川辺で腰掛けてボーッとするのが好きだったけど大雨で水に沈んだ。

台風の時に昔の男から結構連絡が来たのが意外だった。その涙ぐましい努力が報われて2人くらいとはSEXできるといいね。

過去の女は永遠に自分を好きなはずだと疑わないお目出度い男性は結構いる。

男は新規保存だけど女は上書き保存で怖い。という男性がいるけれど女が上書き保存をするのは「なにをしてもあの頃には戻れない」とわかっているからでしょ。昔のフォルダを漁って再編集できると思っている男の方が怖いわ。

男女関係は性格アベコベの方がうまくいくけど、男女間の友情は似たような感覚を持っている方が保たれる。

性格と言えば、ネットの性格診断で必ず「マザーテレサ」と出るんだけど私そんなに優しくなくて、誰がどのように生きていようと興味ない。 悩んだり傷付いたりしている人がいると放っておけないのはきっと、自分が悪者になりたくないっていう後ろ向きの正義だ。

あと性格診断で「ルールを守る堅実な人」とも必ず書かれている。たしかに私は時間や約束を割ときっちり守る方だと自負しているけど、生理は不順でいつも遅れる。案外ルーズな生き物なのよ。

あと新しい会社、みんなエレベーター乗り降りするときにも「失礼します」って言うの、郷に入ったら郷に従うタイプの私でも実行できない。徹底されたちゃんとしてる感はかえって怪しい。

怪しいといえば、高校生の頃通っていたジムの駐車場からマンションを眺めるのが好きだった。はたから見たら超怪しい女子高生。集合住宅は、積み上げられた長方形の空間を最大限楽しもうとする人たちの努力を覗き見できる。同じ間取りでも照明の色、テーブルの置き方、カーテンの遮光性、全部ちがうけどどこか奇妙なお揃い感があって、いくらでも見ていられた。

好きな人の寝顔、猫のごはんタイム、愛おしいものはずっと見ていられる。ずっと一緒にいられるわけではないとわかっているから、ずっと見ていたくなる。

………

アメトーークの立ちトークみたいな記事にしたかったのに、なんだか未投稿のツイートを並べたみたいになった。 猫がごね始めたのでそろそろ終わりにする。

書いたけど公開できていない記事は、冬になったら投稿できると思う。いや、する。

自分のせいにしたいから【あしきょう 夏休み】

by あしきょう

 

f:id:koukandairy:20190812011536j:plain

 

ちやほやちゃんの心の叫びのような前回のブログ、

 

私はとにかく「思ったことを人に伝える」ができなくてね
思ったことも嫌だったことも納得できないことも、言葉に発して伝えることから”自分の感情に自信がない””否定されたくない””口答えしないいい子でいたい”という理由で逃げてたんだよ。救いようのない臆病者だった。

出来損ないであることへの償いのつもりだったんだ【OL もう来ない夏休み】 - 杏子とOLの出席簿

 

「いい子ちゃんほどあぶない」とはよく聞くことだけれど、いい子がどうしてあぶないのかを教えてくれる人は誰もいなかった。いい子ちゃん自身が何かやらかさないと気づけないなんて、結構な仕打ちだ。

 

並べるにはあまりにちっぽけな話ではあるけれど、ちょうど、ワタシはワタシなりの「いい子ちゃん」を実行してきた結果について考えを巡らせていた。

 

1か月半に及ぶ一時帰国中、ワタシは彼との逢瀬を幾度か重ねていた。会うのはいつも、彼が立つお店。ワタシは実家から上京すれば店に寄って、他愛もない会話を小一時間重ねて帰路に着いた。

 

今回帰国して最初に会ったとき、彼はワタシが都内に滞在しているのか、と尋ねた。そのときワタシは自虐的に、箱入り娘だからおとなしく実家にいると返した。その日彼は、ワタシの滞在中また店に来てくれたら会えるから、とワタシに言った。そのときワタシは彼がご飯くらい誘ってくれたらいいのに、まったく覇気がない、と思っていた。

 

二度、三度と店を訪れて、自ずと彼はワタシが何時頃に店を後にするか記憶していたのだろう。ある日はワタシが帰ろうとしたら彼が接客対応に追われてしまい、ワタシは電車の時間の限界が迫っていたので、ちゃんと挨拶するのを諦め、そっと目配せをして帰った。その頃ラインで話していた友達は、彼さ、あしきょうをご飯に誘うくらいのことしなよ〜! とやきもきしていた。

 

今日がきっと、渡航前最後のチャンスだと思って店を訪れた日。いつもより遅い時間だったけれど、その日行かないと機会を逃す気がして無理矢理都合を付けて店に寄った。店に着くまでの電車で、帰宅が少しだけ遅くなること、その日の夕食はワタシが家族分を調達して帰ることを母に連絡し、根回しを済ませた。

 

いつも通りふざけた冗談を言い合っていたら、ふいに彼が、今日は何時に帰るの、と言った。ワタシはその質問の意図を読めずに、門限なんて突破しちゃうもんねー、なんて嘘をかましていた。実際門限となる数字はなかったが、家族分の夕食を調達すると約束したワタシの脳裏では、母がいらいらしない限界値を計算していた。

 

でも彼の質問の意図はその先にあった。「この時間ここにいるってことは…このあとご飯でも行く?」あんなに待ち望んで夢に見たセリフのはずだった。それなのに、ワタシの脳内ではその瞬間「いい子ちゃんブザー」が鳴り響いて思考停止した。「行きたいけど…今日は無理だな」その場でリスケを試みたワタシたちだったけれど、今度は彼の都合が良くない。そしてワタシは、彼とご飯に行けないままに、また遥か遠い国へと戻ろうとしている。

 

彼に「この時間云々」ということを言われるまで、ワタシは全く気づけなかった、彼に気を遣わせていることに。「シンデレラタイムだから」と言って自分の時間で華麗に帰るワタシを引き止めたら、ワタシは母に怒られて傷つくわけで。18時過ぎにはいそいそとスカートを翻してエスカレーターを駆け下りる人を、どうして引き止められようか?

 

そもそも、彼が誘ってくれないなんて思っていたけれど、ワタシこそわかりにくい態度を取っていなかったか? 彼に会いに行くのは毎回、何かの用事で東京に出てきたときだった。ないがしろにされていると思わせたって無理もない。関係をはっきりさせない彼を許しているワタシ、なんて思っていたけれど、自分の都合で店に舞い降りては、自分の時間でぱっと去るワタシを止めない彼のほうが、よっぽどワタシを許している。

 

たかだかご飯で、と思われようが、ワタシたちはかれこれ1年以上、ゆっくり2人きりで腰を据えて話す機会がなかった。お互いの環境が変化して、物理的距離がワタシたちを遠ざけたからだ。この夏は、やっとやっと訪れた機会のはずだった。ここまでの経験をしないと、自分の行動異常に気づけない点で…親との共依存は危険である。

 

でも、全ては自分の選択が招いたことだった、いや、むしろ選択をしなかったツケかもしれない。例えばご飯に誘われたそのときに、「今日は友達とご飯食べてくるわ」というだけのセリフを親に言えない自分の意気地なさ。ワタシが買って帰らないと今日の夕ご飯がなくなっちゃうから、というのがいい子ちゃんブザーの主訴だったけれど、赤ん坊でもあるまいし、そこで帰らなかったところで親は自分の食料くらい調達できる。

 

なのに、ワタシは、そのあと駅弁を買って帰ったのだ。いい子ちゃんブザーが鳴ると、ワタシは選択肢が複数あろうとも、いい子ちゃんの道を選択することしかできない思考停止状態だった。全ては母が強いたことで、ワタシが選んだことではないという、責任放棄でもあったのだと思う。

 

帰宅してから、だんだん自分のとった言動が思い出されて、彼にどういう気遣いをさせたか理解し始めて、激しい後悔に襲われた。親の顔色を見る子、とよく言われてきたけれど、こちらで勝手に顔色を先読みしていなかったか? その先読みの精度は何ぼのものなのか? だいたいが門限を破るだとか急にご飯外で食べると言い出すだとか、10代のうちに通過しておくべき儀礼ではなかったか? あの頃ちゃんとそういうことをしていれば…今ワタシはこうはなっていなかったのではないか。

 

全ては自分が、いい子ちゃんと思われたいがばっかりにとってきた保身だったのだ。

 

自分がやるせなかった。友人に電話をかけて、電話口でさめざめと泣いた。ひとしきりワタシが話したあとで、友人は言った。「今回は残念だったけれど、でもわたしはあしきょうちゃんがそのことを考えられるチャンスを得られて、良かったと思うよ」たしかに、もっともっと大事なシーンで、同じようなことをしてしまわなくてよかったし、今回の経験を経て、ワタシは本当に大事にしたいものを見誤らないようにしようとも思った。

 

でも…今までだと母とのことで何かが叶わなかったとき、どうしようもなく苦しい気持ちになったものだったけれど、今回はやっちまったとは思ったものの、いつもほど混乱してない、落ち着いてる。

 

飛び立つ前の夜、彼は連絡をくれた。食事のリスケが叶わなかったことを詫びつつ、気をつけて、と言ってくれた。詫びたいのはこっちだった。

 

きっと、待っていてくれる。ここまできたら、もう少し甘えさせてもらうほかない。この恋はあまり泣かないものだけれど、今回ばかりは、あの人の優しさと、母の顔色を見続けた自分へのやるせなさで泣けた。彼にも、そして濡れ衣を着せられそうになった母にも、詫びたくて仕方なかった。

 

もうワタシは選択を放棄しちゃいけない。

もう、母のせいにするのも、誰のせいにするのもやめたいから。自分のせいと言いたいから。

 

 

出来損ないであることへの償いのつもりだったんだ【OL もう来ない夏休み】

by ちやほやされたいOL 

 

質問箱の回答を、ここで書こうと思う

非常に気持ち悪い内容なので、閲覧者を減らそうという作戦です

 

 

f:id:koukandairy:20190801222503j:plain

 

 

出来損ないであることへの償いのつもりだった、って言っても信じてもらえないだろうな

 


私はとにかく「思ったことを人に伝える」ができなくてね

思ったことも嫌だったことも納得できないことも、言葉に発して伝えることから”自分の感情に自信がない””否定されたくない””口答えしないいい子でいたい”という理由で逃げてたんだよ。救いようのない臆病者だった。

 


でも発言できなかったモヤモヤや不甲斐なさ情けなさ、自分への嫌悪が消えることはなくて、結局行き場のない攻撃性が内側に向いた感じだ

卑怯者が受けるべき制裁を自分でくだしてたって言えば聞こえがいいけど、結局は精神的な苦しみから逃れるために肉体的な苦しみで紛らわすマスターベーションだったんだよ

 

 

 

高校3年くらいから落ち着いて、傷も目立たなくなったけどやっぱり冬が終わると結構気付かれる

視線の動きでバレたかわかるレベルになったよ笑

 

傷を見た人は口を揃えて「綺麗に消えるといいね」と言ったけど、私自身これまでの蹉跌を恥だとは思いたくない気持ちもある。これは私が悩んで苦しんでそれでもなんとか生きてきた証であり、自分が出来損ないの臆病者だったことを忘れないための烙印だから。

いつか通り魔に顔を引き裂かれて死んでも、この左腕のおかげで私がだれだかわかってもらえるんだよ

 

 

 

 

 

 

.

おしゃれな足下に思う【杏子 出席】

by あしきょう

f:id:koukandairy:20190614000108j:plain


DJあおいは、平熱で恋をしろ、と言った。

熱々の38度ではなく、平熱36度で、と。

 

言うなれば、今の彼とワタシは

平熱の恋をしているのかもしれない。

 

ワタシは今不思議と落ち着いた気分で

彼もそう感じていてくれたらいいなと思う。

 

おしゃれが大好きな彼に

この靴どう思う?とラインをした。

 

すると彼は言った、

前に付き合った子がこれを履いていた、と。

 

彼はこれまで過去の人の話をしなかったから

通知に映った文言にワタシは面喰らった。

 

でも彼が心の結び目を解いてくれた気がして

ワタシは何だか嬉しくなった。

 

過去の人も、おしゃれさんだったんだな。

それは知る人ぞ知る老舗メーカーの靴。

 

もっと知りたい気もしたけれど

彼のペースで少しずつ教えてほしい気もして。

 

ワタシは届いた文言に対して

「おしゃれさんやね~」とだけ返した。

 

「じゃあ買うのはやめとこっかな」

とも書き添えたけれど。

 

それで途絶えるかと思ったら

彼はもう一言だけ送ってきた。

 

「どっちにせよ

 この色は難しいからやめとき」

 

この色を履いていたという彼女は

どんな人だったんだろう。

 

きっときっと彼と同じくらい

不思議な人なんだろうと思う。

 

彼がその色を履いていた彼女を

どう思っていたかは知らないけれど、

その間合いや言葉遣いから
前の人をぞんざいにしない人柄の良さを思ったし、

自己開示を通じて

ワタシを大切に扱ってくれた気がして。

 

何か、彼の歴史ごと愛おしくなる感覚を

ワタシは抱いたのだった。

 

いつか彼に

ワタシの過去を話す日は来るんだろうか。

 

彼なら受けとめてくれるだろうと思う反面、

話すことは、ちょっとだけ、怖い気もする。

 

 

 

戻れない季節に溺れて【OL 長期休み】

byちやほやされたいOL

 

 

平成が終わってしまった


浮き足立つテレビ放送や街の様子を横目に見て
興味なさそうな振る舞いをしていたら
呆気なく我々の前から去ってしまったんだ
まるでまた会えるみたいに
控えめに微笑んで

 


思えばそばにいたものが去る時はいつもそうだった
この手遅れ感は以前にも見たことがある気がする
大切なものは意外と呆気なく姿を消す。美しい記憶だけを置き去りにして

 

f:id:koukandairy:20190504083432j:plain

 

話を戻そう。
どんな時代だったの?
と言われたら少し困る
私は平成以外のそれを知らないから

 

 

 

達成も挫折も就職も初恋も失恋も
一通りの初体験を平成の中でインスタントに経験してきた
あまりにも順調に生きてしまったのが後ろめたくも思うほどだ

 


それでもやはり
とても人様には言えない愚かな方法で自身の存在を確かめたり憂鬱を心に留めておけなくて恥ずかしい患いをしてきた
できそこないの足掻きは見苦しい

 

奇異の目に晒されることもあったが
令和はさらなる絶望と切なさが
私の人生を彩ってくれるだろう
平和ボケした中に球体を落としたように飛び散る悲しみが
私の心を蹴散らして
ときどき現れる小粒の愛と
真実めいた言葉が私を救ってくれるんだ

 


暗くてネガティブで卑屈な自分が嫌いで
なんとかこじらせないように自分で自分を見張ってきたつもりだけれど
もう仕方ない
これが私だから
去る者を引き留めはしない
ちょっと泣いて終わりにするよ

 

 涙のあとに見えた景色がきっと私の道しるべになる