杏子とOLの出席簿

20代女子ふたりの背伸びをしない交換日記。

魔法のごはん【OL 新学期に向けて】

byちやほやされたいOL

 

 

自傷行為・拒食・過食嘔吐
メンヘラのトリプルコンボ決めてきたんだけど

 

今はだいぶ落ち着いて
穏やかな日々を送っていますちやほやです

 

 

 

今日は、大学2年生の時
拒食だった頃のこと
その時にあった不思議な夜のことを
ふと書きたいと思ったので
思い出すように羅列します。
(
我ながら導入が下手)

 

大学生になって
高校の時より太った実感はあった
飲み会も増えたし
バイトが終わるのは深夜で夕飯を食べてすぐ眠る生活
移動範囲と友達が広がって
ランチやディナーにかけるお金も自由になった

 

だから
家族や友達から「ちょっと太ったね」って言われても事実だから仕方なかった
その時は身長168センチで、体重54キロくらい。
決して肥満ではないけど、高校生の時のひょろなが体型よりは丸みを帯びた。

 

周りはふざけてからかうように太ったというけど
今まで自分は痩せている意識があったから

小さなショックが溜まっていてある日ネットで流れてきた言葉にトドメを刺されるほどの衝撃を受けた
「男の役割は仕事をしてお金を稼ぐこと、女の役割は美しい顔と体でいること」


今思えば、なんてくだらない言葉だろうと呆れるけど
当時の私にはグサリと刺さり

自分は女としての社会的役割を果たせていないような気持ちになって

存在することも許されないような思いで頭がいっぱいになった。

 

そこから、夕ご飯では炭水化物を避けるプチダイエットを始めて
1
ヶ月で2キロくらい痩せたら
ダイエットは一気に加速した。

 

 

炭水化物は食べなくなって
肉も魚も極力食べない
サラダもドレッシングなし

 

食べたものと時間を細かく記録して
体重測定は12回決まった時間
食事制限だけでは満足できなくて
Wii
のダンスソフトを馬鹿みたいにやる
エレベーターは使用禁止

 

朝ごはんはお湯
昼ごはんは個包装の一口チーズ1
夜ご飯はキャベツ3

 

信じてもらえないだろうけど
ほんとにこんな具合の食生活だった

 

家族から注意されるのが嫌で
味のするおかずは数回噛んだらティッシュにくるんで捨てた

 

体重は45キロまで落ちた(BMI15.9)
体脂肪率15%
(女性の理想体脂肪率は23%と言われています)

 

快感だった。
努力して、結果が出る
着れなかった服がブカブカになった

 

みんなに「痩せてえらいね」と褒められるのが、嬉しい反面当然だとも思った
私は、命を削って頑張ってる。と
事実、体力がなくなった。
駅で階段を登れなくて乗り換えができなかった事もあるし
笑うのも億劫で無表情でいることが多くなった
抜け毛が酷くなって、夜も4時間以上眠れない
生理も来なくなった

 

 

 

痩せたから終わり
とはならず
痩せれば痩せるほど「もっと痩せなきゃ」とある種の強迫観念に駆られた

 

でもそれでも周りからはダイエットを頑張っていてえらいと言われるし
痩せていない女に価値はないという考えが頭にこびりついて離れない。

 

生理が来なくなったことが親にバレて
婦人科の病院に行ったら
「ダイエットのしすぎで子宮が萎縮している。少しは食べないと将来妊娠できなくなる可能性があるよ」と注意されたけど、食べて太るくらいなら将来子どももいらないかな、と思った
狂っていたと思う。

 

排卵を誘発する薬をもらったけど
副作用に食欲増進と書かれていて死ぬほど嫌だった。

 

 

 

当時のバイトは
イタリアンレストランのホールで
閉店からの締め作業はキッチンの人と2人で行う
私は、キッチンで働く中国人の李さんと一緒に店を閉めることが多かった。

 

李さんは10個以上歳が上で、背が高くて
どんなに店が忙しい時でもマイペースに綺麗な盛り付けの料理を出す人だった。

 

彼とおしゃべりしながらする閉店作業は余裕があって、安心できた。
李さんも私の変化に敏感に反応して声をかけてくれる人の1人だった
「また痩せた?」「顔色が悪い」「ちゃんと食べているの?」
李さんは本当に心配そうに声をかけてくれた
いつも「大丈夫」と返していたけれどある日何故か心が緩んで
「もう2度と、ごはんを普通に食べられないんじゃないかと思うんです」
と言った。笑ってもらうつもりだったのに李さんは眉をハの字にしていた。

 

その次のバイトの日
閉店作業が終わる頃、李さんに呼ばれてキッチンに行くと、耐熱皿に湯気を立てたグラタンが2つある。
私がどうしたのかと尋ねると「ちやほやちゃん、あのね」と李さんは言った


「これは、李さんの魔法がかかっている料理だから、食べても太らないんだよ。温かいうちに食べよう」


冬の、寒い夜だった。
李さんが余った食材で作ってくれたグラタンを、客席の灯りを少しだけつけて2人で並んで食べた。
手先の隅まで温度が届くようで、温かくて、美味しかった。
久しぶりに食べることができた食事だった。

 

李さんの優しさが
とても嬉しかった。

 

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みんな痩せた私を見て
「頑張ってえらいね」「綺麗になった」「どうやって痩せたの?」「何キロ減らしたの?」
と言ったけれど

本当は、そんな言葉が欲しいわけじゃなかった
私は「もう頑張らなくていいよ」という言葉が欲しかったんだ
どこまで行っても終わりのない地獄を、終わらせる許可が欲しかった

 

身を削って頑張ったことを認めて欲しかった
そうでないと自分を許せなかった

次の日からはまたストイックすぎる食生活に戻ってしまったけど
あの夜だけは不思議と食べた罪悪感がなかった。
まぎれもない、李さんの魔法だった

 

私はあの夜のグラタンを一生忘れないだろう

 

 

 

その後私は、1年の拒食の反動で過食嘔吐に陥り

15キロ以上太ってしまうわけだが
それはまた、いつか話せる日が来たら