恋する人魚じゃいられない【OL 夏休み】
byちやほやされたいOL
私は、平成以外の夏を知らない。
平成の夏も
昭和の夏も
新しい元号の夏も
所詮、夏だ。
そんなに変わらないだろう
幼い頃夏とは、プールに入り
面倒な読書感想文と貯金箱作りに格闘するものだと思っていたが
いつのまにか、仕事で過ごす季節に変わった
そして、私は知ってしまった
この世界にはどうにもできない男女のすれ違いがある。
求めるものが違ったり
見てきた景色が違ったり
行きたい場所、大切にしたい順番、得意なものと避けたいもの、隠してきた傷も
吐き出し、許し合うには
夏という季節は短すぎる
ふとした偶然の重なりとすれ違いが
大きなひずみになって崩れて
元に戻せなくなってしまう
全部、すべては夏が短すぎたせいだ
そういうことにしてしまおう
その方が楽だから
すべては夏のせい。
悪いのは、全部夏。
夏はいつもそうだ
浮かれ、乱れ、輝いて
あっという間に終わってしまう
手に入ったと思ったらすり抜けてしまう
足についた浜辺の砂は薄情なほどカラカラに渇いて肌をざらつかせる
あの季節のすべてが夢だったのではないかと錯覚させる秋がやってくる
手遅れの恋がまた増える
それでも夏をきらいになれないのは
あの人と過ごした短い時間が
平成最後の夏を忘れられないものにするほど
美しい時間だったからだろうか