杏子とOLの出席簿

20代女子ふたりの背伸びをしない交換日記。

環状線沿いの哀しさに【OL 通学中】

byちやほやされたいOL

 

春が好きだ


特に春の雨が好きだ


春の雨は少しの絶望と大きな救いをくれる
死を覚悟しない程度の冷たさと
熱を含んだ柔い風が
アンバランスな毎日を紡いでいく

 

思えば人生は絶望の積み重ねだ

笑いたくないのに笑うこと
愛しているのに引き止められないこと
笑わせたいのに泣かせてしまうこと
喉まで出かかって言えないこと
忘れたことさえ忘れてしまうこと

 

 

幾多の絶望を繰り返して
それで人は強くなるというけれど
私にはそうは思えない

絶望したくないと精神の奥まで染み渡って
いつしか期待しない
傷付かない道を選ぶようになってしまった

 

強くなったのではなくて
傷付くことから目を逸らすのに慣れただけだ

 


昔はもっとギラギラしていたように思う
誰にも負けまい
誰の力も借りまい
傷付いても立ち上がる生命力に漲っていた

 

絶望に立ち向かうスタンスだった私は
いつからか絶望に衝撃を受けないこんにゃくのようなスタイルになった

んな自分になりたかったのだろうか

 

 

大きな衝撃もなければ
心を奪われるほど美しい衝突もない毎日の中で

春の雨はふと私に思い出させる
他の誰でもない自分になろうとしていたあの頃のことを

 

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私たちは
人生は一度しかないということを忘れがちだ

言いたいことを言うこと
やりたいことはなにかを犠牲にしてでもやるべきだということ
嫌いな人とは関わるべきでないこと
満たされぬ逢瀬を繰り返さないこと

 

余計な深読みばかりして呑みこんだ会いたいを
間違っていると主張できなかったことを
絶望を回避する為に見て見ぬふりをしたことを
すべての季節をやり過ごしたことを
あとで誰もが後悔するだろう

 

傘の表面を叩く雨粒が
優しく私を責めるようで

私は春の雨が好きだ

 

きみは、どうだろうか