環状線沿いの哀しさに【OL 通学中】
byちやほやされたいOL
春が好きだ
特に春の雨が好きだ
春の雨は少しの絶望と大きな救いをくれる
死を覚悟しない程度の冷たさと
熱を含んだ柔い風が
アンバランスな毎日を紡いでいく
思えば人生は絶望の積み重ねだ
笑いたくないのに笑うこと
愛しているのに引き止められないこと
笑わせたいのに泣かせてしまうこと
喉まで出かかって言えないこと
忘れたことさえ忘れてしまうこと
幾多の絶望を繰り返して
それで人は強くなるというけれど
私にはそうは思えない
絶望したくないと精神の奥まで染み渡って
いつしか期待しない
傷付かない道を選ぶようになってしまった
強くなったのではなくて
傷付くことから目を逸らすのに慣れただけだ
昔はもっとギラギラしていたように思う
誰にも負けまい
誰の力も借りまい
傷付いても立ち上がる生命力に漲っていた
絶望に立ち向かうスタンスだった私は
いつからか絶望に衝撃を受けないこんにゃくのようなスタイルになった
こんな自分になりたかったのだろうか
大きな衝撃もなければ
心を奪われるほど美しい衝突もない毎日の中で
春の雨はふと私に思い出させる
他の誰でもない自分になろうとしていたあの頃のことを
私たちは
人生は一度しかないということを忘れがちだ
言いたいことを言うこと
やりたいことはなにかを犠牲にしてでもやるべきだということ
嫌いな人とは関わるべきでないこと
満たされぬ逢瀬を繰り返さないこと
余計な深読みばかりして呑みこんだ会いたいを
間違っていると主張できなかったことを
絶望を回避する為に見て見ぬふりをしたことを
すべての季節をやり過ごしたことを
あとで誰もが後悔するだろう
傘の表面を叩く雨粒が
優しく私を責めるようで
私は春の雨が好きだ
きみは、どうだろうか