宿題の答え合わせ【杏子 始業式】
by あしきょう
インプットしまくりの冬休みだった。まるで喉が渇ききって水を夢中になってあおるように、ワタシは一時帰国の間に人に会いまくった。
何か、を確認したかったのだと思う。
その何か、は相手によって違った。まずは親との関係を確認したかった。大学時代の友人に会って20代半ばとしての自分たちの歩みが適切なのか確認したかった。小学生時代の友達と会ったときには自分の本質を確認したかった。
相手の中に生きる自分を見ることで、自分を客観的に捉えたかったのだと思う。今住む土地には、昔からのワタシを知る人はいない。だからこそ、日本にいた頃の自分と今の自分を比べて、その変化を知りたかった。
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一時帰国を終えて現在の拠点に戻った今、確認によって得られたのは「どうやらワタシが考えていることは間違っていない」「今考えていることはがんばって続けていけばいい方向に行くだろう」という微かな希望。
具体的に何かが定まったわけではないけれど、そんな過程すら愛おしむべきなんだろうと思う。必ず望んだ結果が手に入る保証は全くない。でも悪いようにはならない、努力を怠らなければ。
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今回はとりわけひさしぶりに会った人も多かったせいもあるだろうが、外見の変化が多く“確認”された。今までの人生では、全く同じ髪型を永遠と崩さなかったり、頑なにメイクを拒んだり、していたから、「見かけ変わらないね」しか言われたことがなかったから、とても新鮮だった。
でも、後輩に会った時に
「先輩は最近彼氏いるんですか? ひさしぶりに会ったらきれいになってはるから、もしかしてって思って」
と言われて、心のどこかでほくそ笑んだ自分を否定できないし、何ならちょっと自分の浅ましさも感じてちょっぴり自己嫌悪なのだが、
一度でいいから、恋をして目に見えてきれいになる、を体験してみたかった。だから、そんなワタシも許してほしい。
昔うちの母がもらした言葉に
「女の子はいい恋をするときれいになるけれど、悪い恋は女の子を醜くする」
というのがある。
もし、今回会った友人たちが、あしきょうきれいになった、と思ってくれたのだとしたら、これはいい恋なのだと確認できる。
心のどこかにそんな思いがあった。
人の手を借りないと自信も持てないのか、と思うと情けないけれど。
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友達はきれいになったと言ってくれたし
歩くときの猫背が改善されたし
自己肯定感でうじうじ悩むことも減った
たとえこの恋が成就せずとも、ワタシはこの恋からいい影響をたくさん受けられたことが、何より恵みだと思う。
帰省の間、彼に会うことは叶わなかった。お互いの実家はあまりに遠かった。
いつまでも浮かれているわけにいかないので、お互い以前のような止まらないチャットをすることはなくなったけれど、交わした少ない言葉に、たくさんのことが感じられて、彼の思慮深さと愛情深さを改めて思った。まあ付き合ってもいないのに、愛情なんて語るもんじゃないのだろうけれど。
英語で送った降誕祭の挨拶は、スコットランド語で返ってきた。その一言を打つとき、彼は半年前に駆け巡ったスコットランドの景色を自ずと思い起こしただろう。
彼はいつも、ワタシに知らない景色を見せてくれる。それでいい。それがいい。